
片倉 等
Hitoshi Katakura
ソニー、村田製作所で技術開発と知財戦略の最前線を経験した、元・技術開発部長、知的財産部部長。
レコード店の店主も務める、カルチャー愛好家。
モットーは「作り手の情熱に敬意を払い、知財戦略を通してその価値を未来へつなぐ」ということ。
技術の「作り手」として生きた日々

私のキャリアの出発点は、ソニーの磁気記録媒体エンジニア、フロッピーディスクの担当でした。そこから、テレビ用の光学フィルム開発など、数々の新規事業立ち上げに没頭する日々。技術者として最も心に残っているのは、ソニーMVP賞をいただいた「立体視フィルム」の開発です。
それは、液晶材料の特性と、現場の精密加工技術が偶然かみ合って生まれた、奇跡のような技術でした。この技術で、埼玉アリーナに890インチもの巨大立体ディスプレイを実装できた時の興奮は、今でも忘れられません。

しかし同時に、私の心には一つの問いが生まれていました。
「もし、もっと早い段階から『どう事業にするか』という”設計思想”が共有されていたら、この素晴らしい技術は、もっと大きな価値を社会に生み出せたのではないか」
という問いです。
この原体験こそが、私の「デジナーレ(設計する)」の原点です。
技術と経営の「翻訳者」へ
その後、縁あって村田製作所でバッテリー事業に携わり、やがて知的財産部の部長を務めることになりました。
開発の最前線から、今度は事業全体を知財で支える立場へ。
そこで目の当たりにしたのは、多くの企業が抱える「言葉の壁」でした。
開発部門は、技術の素晴らしさを「技術の言葉」で語ります。
知財部門は、権利のリスクを「法律の言葉」で語ります。
そして経営層は、事業の収益性を「経営の言葉」で語ります。
かつて開発者だった私にとって、知財部は「遠い存在」でした。逆に知財部長の立場からは、現場に眠る「宝の山」の価値が、経営に正しく伝わっていないもどかしさを感じました。
この三者すべての立場を経験した私だからこそ、できることがあります。
それは、この三者の間に立ち、その架け橋となる「翻訳者」としての役割を果たすことです。
開発現場の想いを、知財部門が守るべき権利として定義し、さらにそれを経営層が納得する事業の価値へと「翻訳」します。
「知財」とは、社内に眠っている価値を発見し、組織全体の力を一つの方向へ束ねる仕事でもあるのだと、確信しています。
そして、デジナーレ知的財産事務所設立。「事業資産の設計士」へ
日本の企業や、技術者が持つ、誠実なクラフトマンシップ。
私は、そのかけがえのない価値が、もっと正しく社会に伝わり、評価されるべきだと、常々感じています。
私が趣味の延長でレコード店を営むのも、根っこは同じです。音楽も技術も、人が積み重ねてきた文化の結晶であり、その価値を未来へつないでいきたいと強く想っています。
デジナーレ知的財産事務所の仕事もまた、その延長線上にあります。
単に権利化の手続きを代行するのではなく、企業や技術者の創造に込められた想い・物語を深く理解し、それが5年後、10年後も事業を支え続ける「揺るぎない資産」となるよう、最適な「設計図」を描き出す。
そんな仕事をすることを大事にしております。
デジナーレ代表 片倉 等 略歴
- 1990年4月 ソニー株式会社入社
- 磁気記録媒体(フロッピーディスク、データテープ等)事業、TV用光学フィルム開発(ソニーMVP賞受賞)などの新規事業立ち上げ、その後10年に渡り、リチウムイオン二次電池など新規系二次電池の開発マネジメントに従事。
- 2009年4月 弁理士登録(登録番号 16369)
- 2017年9月 株式会社村田製作所に移籍(バッテリー事業のM&Aによる)
- 2020年3月 中央大学法学部(通信課程)卒業
- 2021年7月 同社 知的財産グループ・知的財産部 部長
- 知財戦略の導入、知財価値の可視化を目指し、知財アセットの指標化などを推進。
- 2025年4月 日本弁理士会関西会京都地区会 副会長、京都発明協会 知財専門相談員
- 2025年5月 デジナーレ知的財産事務所 設立
その他
- レコード販売サイト「円盤屋 KyoGrooves」店主
講演・著作
- 2024年5月 日本弁理士会関西会京都地区会講演「村田製作所の知財活動」
- 知財管理 Vol.75 No.4 2025 「デジタルxフィジカルの時代に備えた知財活動」 共著
- 知財管理 Vol.74 No.3 2024 「イノベーション創出と促進を図る知財活動の研究」共著
